Mark6

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2026年10月

今月は日記を昇順にしてみます。

10/1(木)

久々に良く晴れていてありがとう。今日は一日かけて都数の先輩方に発表を聞いてもらった。Adv で話した Gromov-Witten Theory あたりの内容について、お呼びした先輩の興味や知識を考慮して少し調整して話した。本当はすべて今日一日で発表しきるつもりだったが、いろいろ技術的な部分の詰めが甘く時間がかかってしまい、半分程度話して一旦お開きとさせてもらった。その先はちょうどミラーに踏み込む内容になり、自分もまだ概念理解が深まっていないところでもあるので、また次の機会に、今度は B-model 側や物理側のオリジンも含め勉強して、発表したい。

正直、証明や構成を追わずに喋っている内容がたくさんある。特に性質の悪いモジュライを扱うことになると、スタックとしての各種性質の証明や射の閉点レベルでない構成、特異性の制御とそのレベルでの各種理論の再展開、仮想基本類の取り扱いなどは、想像を絶する込み入り方をしていて、今追うことじゃねぇなという部分が大きすぎる。特に Gromov-Witten 不変量は、その数自体の意味論はそこまで重要ではなく、それらが満たす公理系であったり定める代数系において十分に面白いことが起きるので、ある程度諦めながら進んでもいいかな~そうでもしないと視野が永遠に広がらないし、第一おもんないし~~~と自分に言い訳をしている。ただ、いくつか証明や構成が気になって原論文を覗きに行った部分などは確実に概念理解に役立っているし、先輩からの質問に答える材料になったので、こんなの追えば追うほど役に立つんだろうなぁとも思ってしまう。

その後図書館に行って、「複素構造の変形と周期」と、各種物理の入門書を借りてきた。あくまで、数学徒のための物理入門書ではなく、物理の人が使っている教科書を選ぶことが隠れこだわりポイントになっている。発表でお呼びした筑波大の先輩は、数学を主体的に理解する手段のひとつとして、当時の数学を当時の言葉と当時の問題意識の中で理解するという歴史探訪をされているそうだ。私が理解したいのはミラーの根源、物理学者のミラー対称性だから、数学徒が「解釈」したなんちゃって物理ではなく、物理の言葉で書かれた物理的事実としてのミラー対称性を理解したいと思っていて、その意味では目的意識がかなり近いなぁなんて勝手に思っていた。10月は今日借りた本たちを読んでいきたい。Arnold の本による解析力学の輪講も始まるし、解析力学と量子論、相対論と共形場理論の言葉と雰囲気くらいを掴んでいき、今年中には弦理論の言葉に触れられたらいいな、なんて思っている。

10/2(金)

複素構造の変形と周期を読んでいたら寝坊した。行きたかった講義はまだ本質部分に入っていないらしいので助かったが、来週からはしっかりしなければならない。

バイトがあった。計算ドリルによる過学習が極まりすぎた結果帯分数の割り算はできるのに普通の分数の割り算ができない小五がいて頭を抱えた。塾講は、世界がままならないということを思い出させてくれる。エリート塾/エリート家庭教師をしている方々には見えない景色だと思う(マウント)

少し前にある先輩にお勧めいただいた曲。神椿って良くってェ......

10/3(土)

公開アカの昨日のツイートにリプが来ていたのだが、知識不足で内容が全然分からなかったので、AI に聞きつつ小平先生の論文を読んで、楕円曲面の特異ファイバー分類について勉強した。まず曲面としての特異点を解消したうえでファイバー上に残っている(-1)曲線を収縮して相対極小にする。この時標準束の自己交点数が消えるので、Noether の公式によって曲面の Euler 数は $12\chi(O_X)$ に等しい。一般ファイバーはただのトーラス束だから Euler 数への寄与は無く、よって特異ファイバーにわたる Euler 数の和がちょうどその $12\chi(O_X)$ になっていなければならない。そして凄いのが、現れうる特異ファイバーとその Euler 数は小平先生によって完全に決定されている! よって現れうる特異ファイバーの組み合わせはもうそれだけで結構決まってしまう。またある意味で対になるような退化の組があったりして、特異値を周回するモノドロミーが反転するといった関係性などもある。この辺の話は、積読している Bădescu にも書いてあるようだった。いい加減曲面論を真面目にやった方がいい。

こんな感じのことを把握したのでリプして、おそらくその理解は間違っていなかったのだが、追加で「$\mathbb{Q}_p$ 上の類似を考えて遊んでみると良いですよ」という感じのことを言われてしまい、完全に降参だった。がちで $\mathbb{C}$ 上以外の話、特に数論が絡む諸々が微塵も分からない。ある時期に私は数論に手を出すことを完全に諦めてしまって、それは今も続いている。初め諦めていた解析や物理は今必要になって勉強しているが、数論は今進む道の上にあまりビジョンが無いというのもある。とはいえ話を聞いたらガロア理論などはどこにでも現れるらしいし、周期まわりではどうしても数論っぽい話は避けられなさそうだなぁとも思う。選択必修は全部取った方がいいらしい。

ところで、上で使った「楕円曲面の Euler 数は特異ファイバーの Euler 数の総和」という話は面白くて、私はこの技術を丁度一昨日自分の発表で使ったばかりだった。「generic な8点を通る平面3次有理曲線は $N_3=12$ 個」という数え上げの証明において、最終的に $\mathbb{P}^2$ の9点 blow-up が $\mathbb{P}^1$ 上の楕円ファイブレーションになっていて、これは選んだ8点を通る cubic のなす pencil の tautological family になっているため、この楕円曲面の特異ファイバーの個数が数え上げの解になることを使うのだった。generic な点を選んでいれば特異ファイバーは小平の分類における $I_1$ 型と呼ばれるものになっており1つの特異ファイバーが Euler 数に1ずつ寄与する。この場合 $\chi(O_X)=1$ だから(あるいは9点爆発だから直接計算することもできる)、$N_3=12$ と結論付けられる。

今日は「複素構造の変形と周期」の Torelli の定理の章を読んでいた。この本は Abel 多様体の一般論を50ページ程展開した後、「素直で幾何的な」証明については概略のみ与え、別証を10ページ、そして周期写像について10ページ弱扱い、次章の Hodge 構造の変形理論への導入としている(これが読みたい)。今日読めたのは Abel 多様体の一般論パートのみで、複素トーラスの射影性の特徴づけ、偏極の型やテータ因子、それから偏極型ごとの複素解析空間としてのモジュライ構成、レベル構造を付加することによる複素多様体としてのモジュライ構成などなどを扱っている。わりと具体的な計算が大きくてきびしいが、偏極周りの扱いはいろいろ身についた気がする。本当は「素直で幾何的な」証明まで読みたかったが難しかった。

3時間ほどギターの練習をした。パワーコードはミュートがうまくいかないと音が濁りやすくて難しい! あとぼっち・ざ・ろっくを見返してモチベが上がった。

それから、輪講の準備をした。Part Ⅰ. の Newton Mechanics をまとめて発表できそうだが、ここまで物理寄りの内容をゼミで扱うのは初めてで温度感が難しい。まだ高校数学の内容を少し線形空間とか多様体、ODE のことばで書き直しただけなのだが......。一通り読み終えたので明日は発表の構成を練って細部を詰めたい。

10/5(月)

大寝坊した。午後から、北大からいらしていた先輩とご飯に行った。とはいっても数理棟で数学や音楽の話をする時間が圧倒的にメインだった。私からは Gromov-Witten Thoery の軽量版を話して、先輩からは Auslander-Reiten 対応とか、ET 圏だとかの話をしていただいた。私がもう少し高橋先生のミラーの本を読めていればもう少しドンピシャの話をできたと思うのだが、それに関しては力不足だった。私が松村で発表した内容(Matlis duality とか)の非可換類似や一般化の話も面白かった。非可換って難しい......し、おそらく面白いんだろうなぁと思う。僕の同期も非可換環上の加群論オモロすぎて離れられないとかいっていたし、踏み込んだら戻ってこれなさそうで怖い。

個人的には数学の話以上に、色々音楽を教えてもらえるのを楽しみにしている。例えば:
私は気に入った曲を無限ループして閉じこもることが多いので、ありがたい。

無限圏ってどう勉強するよみたいな話になったときだったか、「必ず通るがそればかり詳しくなっても仕方がないこと」の例えとして先輩が「単語帳の "vital"」という表現を使っていたのが面白かったので、私も使っていこうと思う。特に東大生には通じることが多いだろう。無粋ながら一応解説すると、鉄壁単語帳の最初の単語が "vital" だということを踏まえている。計画的に取り組まないと最初の方の単語だけ気合を入れて何度も眺めてそこだけ詳しくなってしまうが、それでは英単語を使うのに何の役にも立たないと、そういう意味である。

10/6(火)

今日は Arnold の準備をしながらコードギアスを眺めていた。まさか自分が輪講で Kepler の法則を証明することになるとは思っていなかった。まだ Newton 力学パートだから面白くないが、今回一回で Newton 力学 50 ページを終わらせて、次回こそは Lagrange 力学に入りたい。コードギアスは昔にも見ようと思ったことがあったのだが、某鬱シーンでハピエン厨の私は心が折れてしまい、ギブアップしていた。今回は妹に見ろと言われて見ているので、最後まで見切るしかない;;。

Lie Methods in Deformation Theory これめっちゃ面白そうなのだがこれを全部読むほど変形理論にフルダイブする気はない。とはいえ色々条件が揃ったら読むかもしれない。

10/7(水)

今朝 OpenAI によって 大量の論文 が公表された。 興味のあるものをリストアップする。感情メインなのでこれは断じて日記欄に書くのが正しい。

  • 065. Virasoro constraints for complete intersections and projective bundles.
  • 形式化無し。Gromov-Witten 理論の主要な未解決問題である Virasoro 予想(GW ポテンシャルが、ある Virasoro 作用素による微分方程式を満たすという予想)を、射影空間内の完全交差に対して完全解決したと主張している。これは結構十分な範囲だと思う(quintic threefold とかは超曲面だから当然完全交差だし)。また Virasoro が成立する多様体上の射影束へ Virasoro が継承されることも主張している。シンプルに最近勉強して予想として眺めていたところだったのでアツい。
  • 063. The generalized Mukai conjecture.
  • 形式化無し。某先生が考えていたはずの向井予想(「射影空間の積」を数値的条件で特徴づける予想)を一般化を含めて完全解決したと主張している。問題自体は純代数幾何で、先生から聞いたことがあったかなくらいだったのだが、どうやら Gromov-Witten 不変量、というよりは量子コホモロジーが証明に用いられているようだったのがめちゃくちゃアツい。短めなので、stack のコホモロジー論と仮想基本類の扱いを詰めて、それからこの文脈での Fano 多様体論を勉強したらワンチャン読めそう。
  • 055. Toda’s Gepner conjecture and large-volume stability
  • 形式化無し。戸田先生の Gepner 予想(quintic threefold 上にある条件を満たす stability が存在するという予想)に対し実際に構成を与えたと主張している。それと任意の滑らかな Calabi-Yau threefold 上にも、予想されていた stability を構成したらしい。単にこれから勉強したいことに近い。Li が今年1月に任意の滑らかな射影多様体上に stability を構成しているが、それについて先生が「Bogomolov-Gieseker 型の不等式を証明することで stability を構成することが応用範囲が広いから期待されてたけど Li のやつは違うルートだったからどうだろうな~」みたいなことをおっしゃっていたので、今回おそらくその意図されていたルートで stability が構成されているのはアツそう。とはいえ勉強していない範囲なので意義とか正確なステートメントは知らない。
  • 054. Counterexamples to Kuznetsov’s rationality conjecture
  • 形式化無し。Kuznetsov の有理性予想を反証したと主張している。cubic fourfold の導来圏を半直交分解したときに最後に残る非自明な成分(Kuznetsov component)は K3 曲面の導来圏っぽい特徴を備えているが、それが実際に何らかの"良い" K3 曲面の導来圏になっている(i.e. geometric)ならば、もとの cubic fourfold は有理的であろうという予想だった。そういう形の予想が成り立ってくれたらうれしい気もするので、これを機に何らかの修正が加わって、じゃあどういう条件を込めれば有理性が判定できるのかとか考えていく方向になったりするのだろうか。very general な cubic fourfold が非有理だという話を北大での勉強会で扱ったのでアツい。
勉強していることに近いのはこのあたり。その他で気になるのは
  • 041. Hyperkähler SYZ and projective-space bases.
  • 形式化無し。SYZ を理解したい。
  • 038. Fujita’s freeness conjecture.
  • 形式化無し。藤田の自由性予想という、いわゆる古典的な正値性に関する問題のひとつを解いたと主張している。私でも名前を聞いたことがあるので結構有名な気がする。
  • 028. The Gaussian moat conjecture.
  • 形式化あり。昔聞いたことのあった Gauss 素数の堀問題(決まった歩幅内で渡り歩ける Gauss 素数は有界だろうという、 Gauss 素数の疎らさについての予想)を証明したらしい。さらに強く、そのように渡り歩ける素数の範囲が歩幅ごとに一様有界であることも言えるらしい。
  • 342. Donaldson’s tamed-to-compatible conjecture.
  • 形式化あり。シンプレクティック形式を固定した時、tame/compatible な概複素構造全体は非空可縮であることが、どのシンプレクティックの教科書にも書いてある。逆に概複素構造を固定した時に tamed/compatible なシンプレクティック形式はあるのか?というのは自然で、今回は「4次元多様体上に tamed な形式があるなら compatible な形式もあるだろう」という予想を肯定的に解決したらしい。
あとは Hodge 予想の部分証明とか準リーマン仮説とか BSD 関係とか(10/8:BSD の3本撤回されててワロタ)π の無理数度とか、みんな興味がありそうなやつには興味があるがキリがない。

色々見てみると、結構未形式化が多いことに気づく。そもそも全体として形式化の割合は 40% 程度でそんなに高くない。特に私の興味のある導来圏や数え上げの絡む幾何は全く形式化されていない。実際、仮想基本類あたりの形式化は信じられないほど大変そうなので妥当だろう。おそらく OpenAI もそのあたりは適当に済ませて、最低限準リーマンとかを形式化してお茶を濁している感じに見える。その態度はいかがなものか......AI で論文が乱立することはともかくとして、論文を出すことの責任はしっかり果たしてほしいなぁと思う。

傾理論で2限に出席した。今日は丁寧な圏論入門だったので、流し聞きしながら上記のアブストを読んだり輪講の準備をしたりしていた。とても綺麗な講義ノートが出ているので、次回以降裏コマの解析に出ようか迷っている。

久々に同期に会った。本当にありがとうと、それしか言いようがない。もっと大学に来なければならない。

直帰後ギターを練習した。今日は「青春コンプレックス」も練習してみた。「星座になれたら」と違ってパワーコード中心でまた違った難しさがある。ぼっち・ざ・ろっくの中でも特に好きな曲なので楽しい。

10/8(木)

輪講の準備で夜更かししていたら講究に遅刻してしまった。ごめんなさい。今日は stack theory だったが、先輩が出してくださった例で fibered category というのに直感が少し生えてありがたかった。category of elements というのにいろいろな文脈でもともと馴染みがあったのだが、それを Set 値関手でなく Grpd (一般には Cat)値擬関手にしたのが fibered category ということになりそう。色々腑に落ちた気がする。

そのあと講究の方々とご飯に行った。AI についての考えなどを色々聞けた。経験を積んだ人間が AI と協働するのと、学生が初めから AI を使わない理由がない状態で勉強・研究するのとでは全く違う話で、いったい私たちは何をすればよいのだろうか。VIGORE に入るのは実は多分初めてだった。服が白かったのでカルボナーラにしたが、おいしかったので次はミートソースとかも食べてみたい。

3限の時間で Adv の condensed math の事後夜ゼミを聴講した。Banach 空間とかの話が出てきたところで、そこまで広がるのかと横転してしまった。輪講の関係で中途離脱せざるを得なかったのが残念だった。

輪講初回は Newton 力学パート 10 節 50 ページを大体終わらせた、あるいは終わったことにした。相方はかなり物理有識者なのでボコボコにされるかと心配していたが温情をいただきなんとかなった。今回は高校物理の復習とほんのちょっと大学数学での再定式化があるかなくらいだったので本質的には何もしていない。次回以降の Lagrange/Hamilton 力学は心配だが...。

コモンルームで我々の将来について熱く暗く語り合った。気合は保ちつつ、それでも何らかのリスクヘッジは必要ではないかという雰囲気だった。本当に未来が見えない。おそらく筋トレはしておいた方がよさそう。ルベーグの優収束定理の主張を思い出すなどした。

メモ:以前 Ha の演習で、正規性を外した場合に Hartogs が崩れる例として stacks exchange を参考にしていた。浅縹さんに、この例では下降定理の不成立も観察できるということを教えていただいた。

10/11(日)

「複素構造の変形と周期」を爆読した。つまり、曲線の Torelli を証明した後、Hodge 分解の代数構造を考察し、変形理論との統合として Hodge 構造の変形理論を構築する。周期領域を構成して Torelli を再定式化する。最後に proper でない多様体への自然な退化として混合 Hodge 構造を論じる。4章の共形場理論はまだ目を通してもいない。

普通にわかってない。開多様体に対して対数的な微分形式を使って混合 Hodge 構造を構成するパートはふつうに追えてないし、それ以前にもわかってない部分しかない。向井モジュライをひとりで読んだ時も初めはこんな感じで、発表という目的を自分に課して資料を作る中で色々見えてくるという感じだったので、まぁ発表する機会があるかは分からないが、一通りなにが書いてあるのか把握したこの段階からが本当の読み込みだということにしている。

曲線の Torelli については、周期写像、つまり標準束の大域切断から定まる射影空間への射を用いていろいろ話を進めるから、標準束が微妙な大きさをしている超楕円曲線だけは射が埋め込みにならず少し例外的な議論が必要になる。そのあたりで混乱していた。K3 の Torelli や導来 Torelli もかなり面白いことを言っていそうだった。例えば Fourier-Mukai の K3 の章には少し書いてありそうだが、K3 の Torelli だけを目的にするなら同じく Huybrechts が書いている K3 の教科書とかを読んだ方がよさそうだった。

種数 $g\geq2$ の閉 Riemann 面の粗モジュライは、代数幾何的には Hilbert スキームの GIT 商を取ることで stable curve が加わって $\overline{M}_g$ という Deligne-Mumford コンパクト化が構成されるのを知っているが、複素解析的には、位相構造が変わらないことを用いて、ひとつ閉 Riemann 面 $R_0$ を固定してから「同相 $H:R\to R_0$ のホモトピー類」みたいなものを集めて Teichmüller 空間 $\mathbb{T}_g$ なる複素多様体を構成し、それを $R_0$ の自己同相群で割って複素解析空間を得るらしい。

別文脈で見た Gauss-Manin 接続の意味論が良く分かっていなかったのだが、要するに、複素解析族 $f:X\to B$ のモノドロミーは高次順像 $R^wf_*\mathbb{C}$ が担うので、これの切断を水平切断全体とするような $R^wf_*\mathbb{C}\otimes O_B$ 上の接続があると嬉しいという話だった。この、局所定数層と平坦接続の対応原則は、Riemann-Hilbert 対応という名前で構成可能層と正則ホロノミー系に拡張されている、らしい。Riemann-Hilbert 対応ってこれのことだったのか~~

Griffiths 横断性の意味論が決定的に分かっていない。これは Gross の本で強調されているのを読んだ時からもう1か月くらい経つが分かっていない。まず何が横断しているのかも分かっていない。

適当な条件で複素構造の変形は微分構造を変えないから、コホモロジー全体は変わらないままその Hodge 分解だけが変形する。これは直和分解でなく filtration の変形として見るべきで、つまり旗の変形という線形代数になる。これが Hodge 構造の変形(Variation of Hodge Structure, VHS)である。$B$ を基底とする変形はある意味で $B$ から Grassmann 多様体の直積への射を定める。つまり Hodge 構造の分類空間みたいなものが得られているわけで、これを周期領域という。実は変形にはモノドロミーがあるので $B$ からの射ではなく $B$ の普遍被覆からの射とするべきで、これを $B$ からの射にするには値域にある Grassmann 多様体の積の方を群で割ってやる必要がある。こうして定まる $B$ からの射を周期写像という。まぁ楕円曲線の周期写像を思い描けば素直なことしかしていない。

周期写像を使えば、これの様々な意味での "単射性" として Torelli 問題のバリエーションが定義できる。一般の多様体についてはまだまだ各タイプの Torelli は未解決なものが多いようだった。この本は Calabi-Yau 多様体の定義に、標準束の自明性だけでなく、"$H^i(X,\mathcal{O}_X)=0~~\forall 1\leq i\leq \dim X-1$" という中間コホモロジーの消滅を課している。例えば曲面で見れば、不正則数が零と言っているので、トーラスを排除して K3 だけが Calabi-Yau だと言っている。nLab も同じ定義を採用している。私は標準束の自明性だけで定義してきたが、どういう流儀の揺れなのだろうか。例えば Cox-Katz は orbifold に対して Calabi-Yau という言葉を定義して使っていて扱いにくいなぁと思ったのを覚えている。別で言うと Donaldson-Thomas の文脈で toric Calabi-Yau(標準束が自明なトーリック)を見たが、扇を眺めると標準束が自明になるためには proper を捨てねばならないことが分かる。DT 自体は Atiyah-Bott 局所化で定義するので問題ないのだが、射影的(それか cpt Kähler)かつ標準束が自明、それにプラス滑らかさだの中間の消滅だのを課す普通の Calabi-Yau と disjoint な概念を Calabi-Yau と呼ぶのもなかなか不思議な気がする。

混合 Hodge 構造は何も分からない。特異/非cpt な場合に Hodge 構造-like な代数をうまく対応させたいというのは分かるが技術的に分からない部分が多すぎる。後日の自分に期待。

幾何の演習を片付けようとしたものの、極分解が大変すぎて諦めた。極分解の証明をレポートに出して、先生はいったい何を期待しているのだろうか。「レポート出せば単位」というのを免罪符にしつつ、採点がめんどくさいので演習の時間で発表してねというところだろう。仮眠をとって 高木レクチャー に行った。Kac-Moody Lie 代数その他で有名な Kac と condensed math で有名な Clausen が講演者にいた。もうお一方は力学系の方で存じ上げなかったし講演内容も理解できる気がしなかった。AI にレクチャーのアブストを読ませて講演内容を予想しろといったところ、Clausen は 2026年9月11日、つまり丁度1か月前に出た pdf の内容を解説しそうだと言われた。ただ主題の Weil(-Moore) anima の 講演動画 が8か月前に Youtube に出ているということは別に1か月前に世界に出た結果でもないのか...? 良く分かっていない。8か月前でも十分最近ではあるが...。

Kac の講演タイトルは「ベクトル場の無限次元スーパー・リー環の分類と例外的ド・ラーム複体」。動機からして当然だが有限次元 Lie 代数はある有限次元 Lie 群の接空間となる。無限次元 Lie 代数は、有限次元 manifold の形式完備化の接空間として分類できる。では物理側から来た、odd(つまり fermion)の構造を載せた super Lie 群上の接空間の代数に相当する super Lie 代数についてはどうだろうか? super 抜きでの分類にいくつか例外を加えた形で分類が存在する。よって話は当然無限次元superに進む。思った通りのことが起きて、つまり supermanifold の形式完備化の接空間として、無限次元 super Lie 代数が分類できる。要するに

  • 有限次元単純 Lie 代数
  • 有限次元 Lie 群の接空間。(Killing, Cartan. ~1894)
  • 無限次元単純線形コンパクト Lie 代数
  • 有限次元形式多様体の形式接空間。(Cartan. 1909)
  • 有限次元単純超 Lie 代数
  • 有限次元超 Lie 群の超接空間。(Kac. 1975)
  • 無限次元単純線形コンパクト超 Lie 代数
  • 有限次元形式超多様体の形式超接空間。(Kac. 1998)

こういう分類が解説された。平行して、primitive pair という、だいたい単純 Lie 代数とその極大部分 Lie 代数の組みたいなデータの分類定理も解説された。古典版は Cartan によって 1909 年、super 版は Cantarini-Kac によって 2005~06 年に完成しており、これも証明や構成のアイデアが解説されたが、おそらく Lie 代数の方には上式であろう具体的なテクニックを嵐のように使われてしまい何も分からなかった。明日は無限次元 super Lie 代数の表現を扱うとのことで、テキストには面白そうな図式が色々見える。

Clausen の講演タイトルは「類体論の隠れた構造」だった。私は Neukirch をまともに読んでいるのはⅢ章までで、Ⅳ章の抽象類体論は聞いていただけだった。なんか群コネコネしてるな~と思って良く内容が分かっていなかったし、相互法則や存在定理についても見るたび聞くたびに主張を忘れていた。今日の講演は、少なくとも今日のところは、古典的な類体論を紹介し、相互法則からどのようにして平方剰余の相互法則が出るのか観察し、最後に相互法則の証明をするために類構成という群コホモロジーを使った自然な formalism を解説するというだけで、condensed math とかに踏み入るのは明日以降ということだった。

めちゃくちゃ面白かった。具体的な話と抽象的な話のバランスが絶妙だった。予習してこなかったら完全に置いていかれていた気がするが、なんとかギリ耐えたから面白かった。1年前にこの講演を聞いていたら数論に進んでいたかもしれない。あと Clausen イケメン過ぎる。

明日はつどいもあるしゼミ準備もしなければならないので高木レクチャーは行かなくてもいいかなと思っていたが、Kac と Clausen の講演だけ聞いて、午後につどいに出ようと思った。ゼミ準備はどうにかなるでしょう!

夜は某のライブを見た。高木レクチャーがなければ現地参戦も視野に入れていたが、結果としてこの選択でよかった気がする。個人的には聖者の行進(キタニ)を歌ってくれたのがとても良かった。

金曜に足立レイの V5, V6 が発売され、プロモとして3曲が同時に発表されていた。あまりにも文脈が乗っていて、自分の感情が動くと分かっているコンテンツについて、覚悟ができないと受け取ることができないというのはあるあるだと思う。今朝ようやく覚悟が決まって再生した。これから私が見る syzygy という語すべてにこれが載るというのは、私にとって素晴らしいことだと思う。